研究概要 |
本研究代表者は、水の光分解反応を促進できる光触媒の開発において、これまでに、d^<10>電子状態の金属イオンを含む典型金属酸化物に、RuO_2を担持した揚合に水の分解反応に対してUV照射光下で水素と酸素を与える安定な光触媒となることを見出してきた。本研究では、d^<10>電子状態の典型金属イオンとd^<10>s^2電子状態の金属イオンの両者を含むd^<10>-d^<10>s^2電子状態の複合金属酸化物について、新しい光触媒を得ることを行った。d^<10>s^2電子状態の典型金属イオンであるPb^<2+>とd^<10>電子状態のSb^<5+>の両イオン含む複合金属酸化物として、PbSb_2O_6,およびPb_2Sb_2O_7,また比較のためにアルカリ土類金属イオンを含むd^<10>電子状態の酸化物MSb_2O_6,およびM_2Sb_2O_7,(M=Ca,Sr,Ba)を粉末焼成法により合成した。RuO_2担持後の光触媒活性は、d^<10>s^2電子状態の典型金属イオンPb^<2+>を含む場合に、アルカリ土類金属イオンを含むd^<10>電子状態の酸化物に比べ,6-15倍も高活性となることを見出した。また,Pb^<2+>を少量(<5モル%)のNiやCuで置換した場合にも高活性が維持された。高活性の発現が、金属酸化物の酸素八面体の歪みの局所構造効果に基づくこと,および金属酸化物の価電子帯および伝導帯バンド構造に対する密度汎関数法の計算結果より、PbSb_2O_6およびPb_2Sb_2O_7,では、伝導帯がSb(5s+5p)+Pb6pの混成軌道から構成され,バンド分散が大きく,励起電子が高い移動度を持つことに基づくことを示し、d^<10>-d^<10>s^2電子状態の複合金属酸化物が、新しい光触媒系となることを明らかにした。さらに、d^<10>電子状態の典型金属窒化物Ge_3N_4にRuO_2を担持した場合に,水の分解反応に対し水素と酸素を与える光触媒となることを見出した。これは,金属窒化物が水の分解の光触媒となることを示した最初の例である。この結果は、金属窒化物の多くは可視光吸収をもつため、本研究の発見は、水の分解反応に対し可視光下で働く光触媒系の確立へむけて新たな展開となることを示した。
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