研究概要 |
水の分解反応を促進できる新しい光触媒系を確立することを目的とし、d^<10>電子状態の典型金属イオン(Ga^<3+>,Ge^<4+>,In^<3+>,Sn^<4+>,Sb^<5+>)の典型金属酸化物、d^<10>-d^<10>電子状態の複合典型金属酸化物、d^<10>-d^<10>s^2電子状態の金属酸化物PbWO_4,また、d^<10>電子状態の典型金属窒化物Ge3N4が高活性な光触媒となることをこれまでに見出してきた。本年度の研究では、種々の金属イオンの添加が光触媒作用に及ぼす効果を調べた。d^<10>電子状態のβ-Ga_2O_3において、In^<3+>添加量とともに光触媒活性は増加し,3%添加で最大活性を示し、それ以上では、急減した。In^<3+>添加量とともに吸収波長は、20nmほど長波長側へ、また、X線回折ピークは低角度側にシフトし、光触媒の活性化はInの固溶化によることが示された。ZnGa_2O_4においても、In^<3+>およびY^<3+>添加により光触媒活性は顕著に増加した。これらの活性化が、軌道混成による電子構造の変化およびGaO_6八面体の歪み構造の形成によることを明らかにした。d^<10>電子状態の金属窒化物GaNは光触媒不活性であるが、GaNに2価金属イオン(Mg^<2+>、Zn^<2+>、Be^<2+>)を添加した場合に、安定に水素と酸素を化学量論比で与える高活性な光触媒となることを見出した(助触媒:RuO_2)。一方、4価のイオンであるSi^<4+>やGe^<4+>イオンを添加した場合には、活性化は起らなかった。密度汎関数法による計算は、GaNの伝導帯は大きなバンド分散を持つsp混成軌道から、また価電子帯はN2p軌道で構成される結果を与えた。330nmでの励起光により、Zn^<2+>やMg^<2+>添加GaNの場合には、430nm付近に強い発光が現れた。この発光は、伝導帯近傍のN不純物準位から、価電子帯近傍の2価金属イオンのアクセプタ-準位への遷移に帰属され、GaNがp型化していることが示された。これらの結果に基づき、GaNのp型化により価電子帯に生成する正孔の濃度および移動度が増加し、顕著な光触媒活性をもたらす機構を明らかにした。
|