研究概要 |
本年度は,酸化チタン薄膜を構成する酸化チタン粒子に銅成分を添加することによる光感応性の向上とその殺菌効果について検討した.まず酸化チタン薄膜上に塩化銅水溶液を置き,白色蛍光灯照射の下,水溶液中でCu^+に対して特異的に反応して発色するキレート剤であるバソキュプロインジスルホン酸塩(以下BC)を用いて,反応液中のCu^+濃度を測定したところ,暗条件下の酸化チタン薄膜上では,ほとんどCu(I)-BCは増加しなかったのに対し,白色蛍光灯照射下の酸化チタン薄膜上の反応液中のCu(I)-BCの濃度が増加した.このことから,白色蛍光灯のような近紫外光の微弱な光源によっても,酸化チタン薄膜表面でCu^<2+>がCu^+に還元されることが分かった.次に,ガラス板上では,大腸菌IM303株に対して直接作用しない濃度の塩化銅水溶液を投与し,酸化チタン薄膜上での殺菌活性を調べたところ,光殺菌活性の著しい向上が見られた.この結果をふまえ,溶液中ではなく,酸化チタン薄膜表面において固相のCu(I)とCu(II)を介した光殺菌機構を有する殺菌反応場の検討を行った.酸化チタン薄膜のコーティング液原料に銅塩を加えることにより,銅含有酸化チタン薄膜(以下Cu/Ti)を調製した.同様の光殺菌実験によって光殺菌活性を比較したところ,銅を含有しない酸化チタン薄膜に対して,Cu/Tiは光殺菌活性が著しく向上し,データより見かけの不活化速度定数k'の値を算出すると,約10倍の値となった.また,元素分析により6時間Cu/Ti上に静置した反応液中のCu^<2+>濃度を測定したところ,9μM程度のCu成分の溶出が認められたが,この濃度のCu^<2+>では,溶出した銅による直接的な不活化効果はないことが確認された.
|