研究課題
ナノスケールの有用な機能性材料を開発し、超分子集合したときの構造、光物性、及び応答性の制御から、光機能性材料としての光化学的及び電気化学的特性の検討を行う。本研究では、明確な構造に組み上げることが可能な生体超分子タバコモザイクウィルス(TMV)をフレームとして、自己集合により光機能性分子の規則的な集積を行った。組み換えTMVコートタンパク(CP)の4種類のシステイン変異体(98、99、100、101位)にN(1-pyrene)-maleimideを導入し、ピレン修飾TMVCPを作成した。その超分子構造形成(pH5.5)をAFMによって解析した。その結果、位置特異的な超分子構造形成の違いが見られ、99位及び100位にピレンを導入したTMVCPは2μmを超えるロッド構造を形成することが明らかとなった。未修飾のTMVCPでその長さが0.3μmであることから、ピレンが超分子構造の伸長を促進することが明らかとなった。また、比較的高いpH(7.6)でもロッド構造は保たれることから、ピレンが超分子構造の安定化にも寄与していることが明らかとなった。ピレン間の相互作用はUV-visスペクトル、定常状態及び時間分解蛍光スペクトルによって検討した。発光スペクトルでは、位置特異的なエキシマー形成の違いが見られ、99位及び100位にピレンを導入したTMVCPは強いエキシマー形成が見られたのに対して、98位及び101位にピレンを導入した場合、エキシマー発光は非常に微弱であった。99位及び100位にピレンを導入したTMVCPの蛍光寿命測定では、エキシマー発光のライズは見られず、TMVの内孔で予めピレンのダイマーまたはオリゴマーが形成されていることが明らかとなった。また、エキシマー発光の2成分のうち短寿命成分が観測されたが、これは近接するピレンによる消光であると考えられ、ピレンが複数スタックした構造が形成されていると考えられる。以上から、TMV内孔内に導入したピレンは、導入位置特異的にピレン間の相互作用の形態が異なり、TMVの超分子形成においてピレンがその構造の安定化と伸長を促進すること、またピレン間が超分子形成の際に予めスタックした構造をとっていることが明らかとなった。
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