研究課題
本研究では、明確な構造に組み上げることが可能な生体超分子タバコモザイクウィルス(TMV)をフレームとして、自己集合により光機能性分子の規則的な集積とその光機能性について検討した。TMV超分子に光機能性分子を集積し、らせん状にクロモフォアが集積した構造の構築とその物性の検討を行った。TMV-ピレンで得られたクロモフォアの導入位置と超分子形成時の配置の知見を基に、TMV超分子内でのエネルギー移動系の構築を行った。光合成関連の光機能分子であるポルフィリン誘導体の集積を行い、そのナノ構造の形成とエネルギー移動過程の検討を行った。porphyrin (FbP)-maleimideとZn-porphyrin (ZnP)-maleimideを合成し、TMVCPの123位をシステインに変異させ、それぞれのポルフィリン誘導体を位置選択的に導入した。これらのTMV-porphyrinモノマーをpH7.0及びpH5.5で自己集合を行い、ZnPからFbPへのエネルギー移動を検討した。ZnPとFbPのモル比を変化させたTMV超分子を作成し、それぞれの比のモノマーの発光スペクトルと比較した。その結果、TMV超分子ZnPの発光強度の減少及びFbPの発光強度の増加が見られた。FbP発光強度は多層超分子構造を形成するpH5.5では10%FbPが含まれるTMV超分子構造で4.5倍まで増加した。エネルギー移動効率は10%FbPで2層のディスク構造を形成するpH7.0では24%、pH5.5では32%であった。このことからエネルギー移動は2層間よりも多層間の超分子構造で効率的に行われ、隣接したポルフィリン間と層間のポルフィリン間でもエネルギー移動が起こることが示唆された。TMV超分子内のZnP発光の蛍光寿命測定からZnPのみの超分子では1成分であるのに対して、FbPが添加されると、短寿命成分が見られ、エネルギー移動に由来する成分であることが示唆された。その寿命から、エネルギー移動速度はpH5.5の10%FbP/ZnP-TMV超分子でk_<ET>=6.4x10^9s^<-1>であった。以上のように、TMV超分子を足場としたポルフィリンの位置選択的な導入と集積が可能となり、ZnP/FbP-TMV超分子内でZnPからFbPへのエネルギー移動を介して光捕集が行われることが明らかとなった。
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