二次元表面プラズモンを三次元ナノ空間に局在化させることにより、光の回折限界を打ち破る革新的な光制御・応用が可能となる。金は、可視〜近赤外域の光電場との相互作用により顕著な表面プラズモン共鳴をおこし、可視〜近赤外域の光が制御できる。そこで本研究では、平成16〜17年度に引き続き、ボトムアップアプローチにより様々な金ナノ構造体を構築し、ナノ構造表面の分子を高効率で励起し、表面増強ラマン信号への影響や電子移動反応で駆動する光電流発生反応の高効率化など、分子励起に基く新規光反応場の構築と反応系開拓についての研究を展開した。 (1)表面増強ラマン散乱(SERS)計測 形状の異なる金ナノ粒子の集積体を塩析法で作製し、アニーリングによる微細構造変化を表面吸着色素のSERSスペクトル変化で検討した。その結果、過塩素酸ナトリウムと水酸化ナトリウムを用いた場合で融合状態が異なり、前者を用いた場合の方がミクロ構造変化が起こりやすいことがわかった。 (2)生体分子の励起 金ナノ粒子とDNAの会合体を作製し、光照射によるDNAの放出実験について検討した。その結果、近赤外レーザー光を用いると、DNAの放出が認められた。また、金ナノ粒子の形態変化がタンパク質の構造変化にも影響を及ぼすことを明らかにした。 (3)光電流増強の改善 金ナノ粒子の二次元配列構造に色素を固定し、光電流挙動を検討した。ナノ構造体のプラズモンスペクトルや蛍光スペクトルの比較検討により、プラズモン電場による分子励起効率が向上することが確かめられた。さらに、電解法によるナノ珊瑚構造の電極やシリカ粒子を利用した金ナノ構造体からなる電極も合成した。これらに色素を固定し、光電流測定を行い、二次元構造体よりも大きなプラズモン電場の効果を見出した。
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