カチオン性ポルフィリン類をゲスト分子、カチオン交換性無機層状化合物をホスト材料として、両者からなる無機有機複合体の構造制御について検討した。両者からなる複合体においては、ポルフィリン分子は高密度に吸着しながら、全く会合を伴わないという興味深い挙動を示した。すなわち、複合体中のポルフィリン分子は、励起状態の励起寿命が失活を受けず、反応活性な状態を維持している。この様な特異な挙動は、ポルフィリン分子内でのカチオン電荷間距離と、層状化合物上における平均アニオン電荷間距離の一致が重要である事を見出し、"Size-Matching Rule"と名付けた。通常の溶液中ではポルフィリン分子は、その分子面を層状化合物表面に平行な配向を示す。非プロトン性の溶媒雰囲気においては、ポルフィリン分子は吸着配向を変化させ、層状化合物表面に非平行な状態で吸着していることを明らかとした。導波路ガラス上にポルフィリン-層状化合物複合体をモノレーヤーの状態で配置した。この試料におけるポルフィリンの吸収スペクトルを導波路上に発生するエバネッセント波を用いて観測した。通常の分光法では、モノレーヤーの試料では吸光度が小さすぎ観測が困難であるが、導波路上の測定では光の多重反射を利用することで高感度な測定が可能である。この分光法に偏光分光を併せ用いる事でポルフィリンの配向角を定量的に見積もった。偏光の二色比の測定より、ポルフィリンの水中では配向角は層状平面に対して5度以下、ジオキサンなどの非プロトン性溶媒中では約70度と求める事ができた。この現象を利用し、三種の異なるポルフィリンが共吸着した試料について検討を行った。その結果、三種のポルフィリンをそれぞれ独立に配向制御できる事を発見した。以上の様に分子レベルで複合体構造を制御し、その挙動を定量的に観測する事に成功した。
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