白金とロジウムの異種金属が織り成す、混合原子価一次元鎖の合成と単結晶構造解析に成功した。この一次元鎖は、金属がPt-Rh-Pt-Pt-Pt-Pt-Rh-Ptの順に一次元状に並んだ八核錯体を形成しており、さらに、八核錯体同士をCl^-が架橋することで無限一次元鎖化していた。単結晶構造解析より、八核金属部位の合計酸化数は19+であり、1つの不対スピンを有することがわかった。この常磁性一次元鎖のESR測定の結果、2に近いg値とブロードな線幅を観測した。観測不対スピンのスピン軌道相互作用が小さいことを考慮すると、不対電子はRh dxy軌道に存在すると考えられる。さらに、スペクトルがブロードな理由は、隣接ロジウム間を高速にホッピング運動しているためである。つまり、金属酸化状態は-Pt(3+)-Rh(2.5+)-Pt(2+)-Pt(2+)-Pt(2+)-Pt(2+)-Rh(2.5+)-Pt(3+)-であり、帯磁率とXPS測定の結果もこれを支持している。さらに、極低温から常温までの、温度可変ESR測定をした結果、g値は常に2に近い値をとったが、スペクトルの線幅は、温度に依存して顕著に変化した。一次元鎖の1つは、線幅が7.9K付近で、最もブロードになった。ホッピング運動は、温度上昇とともに、高速化すると考えられる。つまり、7.9K付近で、ESRタイムスケールと合致し、不対電子は隣接ロジウム間を1秒あたり億オーダー回往復することがわかった。
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