研究概要 |
本申請は、光を抑制する材料として注目を集めるフォトニック結晶(PhC)を利用して、色素増感型太陽電池の効率向上を試みるものである。本年度は、様々な周期長を持つ色素増感型PhC電極を作成し、一色素あたりの光電変換効率測定および太陽電池特性測定を行った。色素としては、葉緑素クロロフィルの誘導体であるクロリンe6を使用した。その結果、フォトニック結晶の周期により電池特性が変化した。特に、いくつかの周期では、PhC構造がない電極よりも電池特性が向上した。 本結果について、ナノ材料的視点から電気化学インピーダンス測定を行った。PhC構造がないものとあるものでは電気化学的抵抗値が異なったが、PhC構造があるものについてはほとんど同じ値を示した。すなわち、太陽電池におけるPhC効果を見るためには、PhC同士で比較する必要があることがわかった。さらに、構造による入射光散乱の効果を見るために、透過スペクトルを測定した。その結果、色素の発光を抑制するPhCに関しては、入射光が表面で散乱するにもかかわらず、他のPhCよりも高い電池特性を持つことがわかり、フォトニック結晶の発光抑制効果が上記電池特性向上を導いた可能性を示唆した。上記成果について、国内学会6件、国際学会4件で報告した。 本系では、フォトニック結晶の作成法として安価に作成できる散逸構造体を利用している。本年度は、この散逸構造の作成に関して、種々の雑誌・書籍・総説に掲載していただいた。また、第十回 日本女性科学者の会 奨励賞を受賞した。さらに、ポリマーと金属の表面弾性を生かした散逸過程の研究については、2005年8月出版のChemical Technology"Keeping wrinkles under control", 2005,Vol.2,T29-32でもニュースとして取り上げられた。
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