X線及び硬X線天文学で最も観測が遅れているのが偏光である。これは偏光を検出できる感度の高い検出器の製作が困難だからである。そこで研究代表者は、マルチアノード光電子増倍管(MAPMT)とセグメント化されたシンチレーターを用いて、ユニット化された硬X線偏光度検出器の開発を行った。ユニットカウンターは36本のプラスチックシンチレーターと28本のCsI(Tl)シンチレーターで構成されており、それらが64チャンネルのMAPMTで読み出せるようになっている。我々が開発した検出器は50%以上のモジュレーションファクター(偏光解析能力)と20%程度の検出効率を有しており、同じ検出面積で比べた場合には、現時点で世界最高の感度を持っている。以上のユニットカウンターを4台、モニターカウンターを1台搭載した検出器をアンタイ検出器で囲んだ気球搭載用の検出器が開発されている。この検出器はPHENEX(Polarimeter for High ENErgy X-ray)と名付けられている。 コンピューターシミュレーションによりPHENEXの性能を調べたところ、6時間の気球による観測でかに星雲の偏光度を測定できる事が分かった。そこで、PHENEXで実際にかに星雲の観測を行うために、検出器の気密箱、検出器のエレベーション機構や視線方向への回転機構を平成17年度に開発した。また、かに星雲のポインティングを行うために必要である太陽センサーの開発も行った。平成18年度に気球実験を行うことが、宇宙科学研究所本部より認められており、現在検出器のインテグレーションを進めている。
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