研究概要 |
過去数年の多波長光学観測の結果、γ線バーストは遠宇宙で発生する高エネルギー現象であり、またその発生源は、太陽質量の数倍から数十倍の質量を持つ高速回転するブラックホールとその周りに存在するディスクである、ということが明らかになりつつある。このような天体を形成させる候補として、高速回転する大質量星の重力崩壊が有力視されている。 本研究課題は、高速回転する大質量星の中心核の重力崩壊を完全に一般相対論的かつ現実的状態方程式を考慮した数値シミュレーションを実行して調べ、ブラックホールやその周りのディスクの形成条件、およびブラックホールとディスクの形成過程などを明らかにすることを目的とする。 本年度は既存の一般相対論的数値流体シミュレーションコードに、新しい数値流体コードおよび現実的状態方程式を組み込む作業を行なった。採用した現実的状態方程式は、日本のグループ(Shen, Toki, Oyamatsu, & Sumiyoshi, Nucl.Phys.A 637(1998),435)によって導出され、テーブル化され、そしてウエブに公開されているものである。すでに組み込みを完了し、現在テスト計算を実行している最中である。また新たに開発した数値流体コードの詳細やテスト計算結果に関しては、すでに論文として公表している(Phys.Rev.D 72(2005),047501)。来年度は完成したコードを用いて、大質量星のブラックホールへの重力崩壊過程を調べる予定である。
|