今年度はX線天文衛星Astro-E2の打ち上げ前動作試験に参加し、検出器に異常がないか万全のチェックを行った。その後、Astro-E2は2005年7月に鹿児島内之浦から無事打ちあげられ、「すざく」と命名された。「すざく」に搭載された硬X線検出器、および本研究で用いられるそのシールド部の初期運用を行った後、これまで大きな問題もなく順調に動作している。シールド部は50-5000keVの広帯域X線〜ガンマ線に感度をもつ全天監視装置(Wide-band All-Sky Monitor : WAM)となり、ガンマ線バースト(GRB)を検出することが期待されていたが、2005年8月22日より本格的運用を開始し、2006年2月までに62個のGRBの検出に成功した。これは実に年間120個以上のペースであり、現在活躍中のGRB検出器では最大級である。GRB051008などいくつかのGRBでMeVを超えるエネルギーをもつガンマ線を有意に検出している。同時に、WAMの性能を最大限ひきだすため機上較正を行ってきた。Swift衛星搭載BAT検出器と同時に検出されたGRBを用いて、様々な入射方向について調査し、20%以内の不定性でフラックスを決定できることが分かった。これら較正に基づいてエネルギースペクトル解析を行い、Swift/BATと組み合わせることでGRBに特有なエネルギーピークを数10keVから1MeVまで測定できる可能性を示した。今後、BATチームの協力も仰ぎつつGRB放射の研究を推し進める。さらにGRB惑星間ネットワーク(IPN)に参加し、複数衛星の到来時間の遅延を用いたGRBの高精度位置決めを行う体制を整えた。GRB060213では、約1日後に数10分角で位置決めに成功し、可視光対応天体の発見をもたらした。今後もGRBの起源を解明すべく、国際協力のもと位置決め速報を世界に発信してゆく。
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