研究概要 |
平成18年度には,7月にブレーザーPKS2155-304がTeV領域で歴史的な大フレアーアップを起こしていることをH.E.S.S.グループが報告し,多波長による同時観測が行われた.我々も,オーストラリアのCANGAROO-III大気チェレンコフ望遠鏡によるToO観測を実施した.3台の望遠鏡によるいわゆるウォッブルモードでのステレオ観測により,7月28日から8月2日の間に5夜,8月17日から25日の間に6夜,合計約36.7時間観測した.そのときの平均天頂角はおよそ21°で,平均のトリガーレートはおよそ12Hzであった.雲の影響を除いたクリアーな観測だけを選びDAQの死時間を考慮した有効観測時間は計32.1時間で,イメージクリーニングした後のシャワーレートは平均で7.4Hzであった.解析の結果,7月末の観測では,平均の積分フラックスがエネルギー閾値630GeVで(2.3±0,4)×10^<-11>cm^<-2>sec^<-1>(べき3.3のべき型関数を仮定)と求められた.これはおよそ60%Crabに相当する.また,夜毎の積分フラックスを求めることにより,30日におよそ100%Crabに達した後,急激に活動が低下する様子を捉えることに成功した.この6日間の変動の偶然確率は0.8%以下と計算される.8月の観測では,平均の積分フラックスが630GeVのエネルギー閾値で(8.9±3.0)×10^<-12>cm^<-2>sec^<-1>(〜25%Crab)と得られ,7月末に比べ,その活動が落ち着いたことがわかった.これらの時間変動は,H.E.S.S.の観測サイトと経度にして120°ずれていることを考慮すると相補的であり,今後放射メカニズムを明らかにする上で貴重なデータとなる.今のところ他波長との強い相関が見られず,その変動幅はTeV領域で圧倒的に大きいことが新たな謎となっている.今後さらに詳しい他波長の結果が公表されれば,全く新しい知見が得られるかもしれない.
|