ブラックホールでのX線放射機構、特に高エネルギー成分の起源を探るために、GRS1915+105のRXTE衛星による観測データを解析し、異なるエネルギーバンドの時間変動の遅延関係を調べた。高エネルギー成分の変動が低エネルギーX線より早く起こることを突き止めた。これは従来の低エネルギーX線が高エネルギー電子により逆コンプトン散乱されて高エネルギーX線が放射されるというモデルと単純には相容れない結果である。この研究を、同じくブラックホール候補であるX1630-47にも適用した。これはX線新星である。新星の初期段階では高エネルギー側が早く、減光時期のハイ/ソフトステートと呼ばれる時期では高エネルギー側が遅れているという結論が得られた。また、X線パルサーであるGX1+4も同じようにエネルギーバンドの違いによる時間変動の遅延関係を調べた。その結果、鉄輝線成分が連続成分から遅れていることを突き止めた。これより鉄輝線の放射領域の大きさや距離まで推定することができた。 超高精度X線望遠鏡の開発研究では、直入射鏡を使った13.5nmの望遠鏡の全体がほぼ完成した。また、試験用のX線発生装置も電子衝突ターゲットとしてAl/Si合金を用いることで、SiのL輝線を放射できることを実験的に確認した。この、Si-L輝線を用いて、まもなくX線照射実験を試みることができる。また、光路の異なる可視光で、X線の波面を修正する試みの問題点を検証するために、計算機シミュレーションを行い、その有効性を調べた。さらに、本研究で新たに着手した斜入射光学系の補償光学を可能にするための設計を行い、まずは主鏡を購入した。また可視光試験用の微動台等を購入して実験の準備に取り掛かった。
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