近傍銀河に知られる超光度X線天体(Ultraluminous X-ray souarce ; ULX)は、恒星質量ブラックホール(太陽の10倍程度の質量)と活動銀河中心核に存在する超巨大質量ブラックホールの失われた環をつなぐ中間の質量をもつブラックホールとして期待されている。本研究はこのULXの正体を観測的に解明することであり、今年度は、X線と可視光観測、およびスペクトルのモデル化によって、以下の点を明らかにした。第一に「すばる」望遠鏡で観測したM81銀河中のULXのデータ解析を進め、連星の軌道周期由来と思われる変動を確認するとともに、分光観測からこのULXに付随する輝線ネビュラの存在を示し、天文学会秋季年会において発表した。また、ULXのX線スペクトルを理解すべく、イギリスのクリス・ドーン博士と共同で高降着率で輝くブラックホールの降着円盤を記述するモデルスペクトルを構築した。この結果は恒星質量ブラックホールおよびその延長としてULXのスペクトルを理解する上で重要である。また今年度うちあげられたX線天文衛星「すざく」で観測されたNGC1313銀河中のULXの解析を大学院生らと共同で進めている。
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