研究概要 |
火山爆発は地中から地表への物質の放出現象であるため,地表で生じる現象は火山ガスや火山灰などの物質が火口からどのように放出されるかに大きく左右される.火口からの物質放出現象を表現するパラメータは,噴出速度・噴出圧力・噴出物質の密度・温度・粘性等といった物理量や,火山灰や岩塊の粒径分布,組成など様々である.火口近傍で直接測定をすることが困難なこれらのパラメータを精度良く観測するための方法の1つとして,本研究では火口での物理パラメータのうち物質の噴出速度を精度良く捉えるために,3次元的な可視画像の撮影装置を製作し,火山現象を対象とした安価で高精度な画像観測方法の確立を目指す. 3次元画像計測は,産業機器開発や人体等の運動計測で幅広く利用され,目的に応じた測定法や解析技術が生み出されてきた.火山の機動観測を想定した場合には,可搬性と省電力性が機材に求められる要件の大きな部分を占める.本研究では,安価で可搬性に富んだ観測装置を作成するという目的から,受動型のステレオ法に基づいた撮影をするための装置を制作する.ステレオ法は複数台カメラの映像(2次元情報)から,それぞれの映像中から同一の対象物を選択し,3次元座標値に変換するという手順をとる.それゆえ,撮影速度や被写体の運動速度に対して,異なるカメラの映像撮影時刻が十分な精度で同期している必要がある.本装置ではカメラの設置場所に制限を与えないという観点から,特定小電力無線装置を用いてトリガー信号やフレームカウンター信号を伝送することを予定しているが,本年度はPCやカメラの電気的特性やファームウェアロジックとの相性を確認するためにまず有線で同期試験回路を試作した.今後屋内外での試験を重ねながら,ハードウェアとソフトウェアの調整をさらに進めなければならない.既に無線系の開発も始めているが,有線系での動作が安定してから無線系の実機制作に取りかかる予定である.また試験撮影データが増えてきたら,カメラ定数の推定と誤差の関係について検討を進めていきたい.
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