研究概要 |
水蒸気爆発における地下水や水蒸気の変動を捕らえる前段階として、間歇泉において電磁気観測を行った。間歇泉は実際に火山に比べ、アクセスが容易で、短時間に繰り返し観測できる利点がある。本研究では地球電磁気学的なアプローチをし、蒸気層生成に伴う比抵抗変動観測と自然電位の時空間変動観測を行う。 フィールドは宮城県鳴子町の鬼首間歇泉である。これは季節により挙動が変動することが知られているが、われわれの観測時には、噴気サイクルが18分で、2分20秒間にわたり高さ16メートルほどの噴気があった。観測は9月6-7日、12,月4-6日の2回行った。9月は、比抵抗変動観測と自然電位4chを行った。12月には自然電位12chの観測を行った。昼間の観測ではデジタルビデオを撮影し、それを元に噴出の開始終了時刻および噴気の高度を推定した。 比抵抗変動観測は、AMT測定装置を用いた。噴出孔をまたぐように、長さ10m程度の直交する電場ダイポールを設置した。1分ごとの比抵抗変動を観測した結果、7200Hzにおいては噴出に先立つ1分間に比抵抗が1/4減少することが見出された。このほかの周波数においても同様の傾向が見出せるが、自然信号を利用しているため、ばらつきが大きい。自然電位については、12月に12チャンネルの同時観測を噴出孔の周辺10mx10mで行った。重要な発見は、噴気に先立つ10-25秒前に自然電位の上昇が観測されること、噴出時に噴出量に比例した電位異常がでること、噴出終了後に貯留層に流れ込む流体による大きな自然電位変動が出ることである。観測利、噴出に先立つ自然電位変動、噴出後に貯留層へ流れ込む流体移動に関してモデルを作成した。定量的な理解のために、自然電位分布の時空間変動から、等価なポイント電流源位置を探った。貯留層へ流れ込む流体による電流源は噴出孔直下ではなく、約3m西側の深度5mにあり、噴出開始に向けてそれが噴出口に近づき、噴出中はそれが噴気孔から下がることがわかった。噴出中の振る舞いは蒸気と流体の境界面の移動を反映していると解釈される。
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