間歇泉は、火山噴火の類似として、その噴出の繰り返し間隔が短いこと、アクセスが容易であることから、火山爆発場の類似として、重要な研究対象である。本研究の目的は、比抵抗と自然電位の観測をすることによって、噴気に伴う地下水や水蒸気の流動を推定することである。研究対象は宮城県鬼首間歇泉である。噴出孔の周辺に5箇所の流電極を設置し、順次200-300mA周期4秒の交代直流(50%dutyサイクル)を注入し、23個の電位極で電位変動を24ビットのロガーで観測し、時間分解能2秒で比抵抗トモグラフィーをおこなった。 噴出孔の金属ケーシングに電流を流した場合には、間歇泉噴出の15秒前から最大5%の見掛比抵抗の増加が観測された。一方、噴出孔から5m程度はなれた周辺で電流を流した場合には、逆に見掛比抵抗が増加する傾向が顕著で、その空間パターンは噴出孔をはさんで電流極の反対側に変動のピークをもつ。これらの挙動は、有限要素法による3次元モデル計算によって定性的に説明できることがわかった。すなわち、噴出孔直下にある空洞が、噴出15秒前から熱水と蒸気の混合したもので満たされることによって、説明できる。 また、自然電位変動からは、流体の移動が推定される。最も顕著な自然電位変動は、噴出中ではなく、噴出後にあることがわかった。これは多孔質中を流れて供給された水が、亀裂系のリザーバーに入ることで流動電位を発生できなくなり、その境界に電荷が取り残されることによる。噴出直前には、地表付近の亀裂系に流体が上昇するために、噴気孔の側方を中心とした弱い電位異常の分布があることもわかった。
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