研究概要 |
平成17年度は,以下の2つの研究を行なった.第1は,前年度までの同名の研究課題において行なってきた研究の補足調査を行い,より完成度の高い研究とした.浅間火山の2004年噴火活動前後の噴煙活動について,赤外映像を解析し,噴火の準備過程と解釈可能な長期的な変動を捉えるとともに,噴火活動の最盛期において,噴煙の変動が周期400秒から周期300秒程度にまで短周期側にシフトしていく事実を明らかにした.火山活動の状況によって,変動の周期が変化した事を捕らえたのは初めての事である.この変化は,マグマが火道中をせり上がる事によって火口底とマグマの頭位間の距離が短縮し,共鳴体のスケールが小さくなる事を反映したものというモデルを提出した.この研究成果は,「火山」の論文として公表した.第2の研究は,可視映像の解析手法の改良である.可視映像を解析するに当たって,映像の背景に真っ白い積雪や真っ黒な溶岩などがある場合に輝度の時間変化を数値化できないとか,映像の輝度が白く飽和したり,複数の噴出源からの噴煙が重なりあって,変動をうまく数値化できないという問題点があった.この問題点に対して,時間差分映像を作成することで,噴煙の移動をより正確に把握する事が可能となった.またさらに,噴煙の変動の発生場所を正確に把握する事により,差分値の時間変動を適切に解析する事が可能となり,従来の解析では十分に変動を議論できなかったケースでも議論が可能となった.たとえば,阿蘇山の中岳では,火口中心部の噴気活動について,解析を行い,周期1秒程度の変動を検出する事に成功した.
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