研究概要 |
本研究は、火山爆発の原因であるマグマ発泡現象のアナログ実験として含水珪酸塩ガラスの加熱発泡実験をおこない、高分解能X線CT装置によるマイクロトモグラフィーを用いた3次元構造の時間発展(4次元構造)の観察法と解析法を確立し、さらにこれにより発泡過程とそのメカニズムを理解しようとするものである。 平成17年度に含水流紋岩質ガラス(黒曜石)を用いて確立した観察法・解析法を、本年度は含水玄武岩質ガラスに適用した。天然物には実験に適したサンプルがないので、サンプルは内熱式高圧炉で合成した。これをステンレス製の字具に固定し、一定温度(675,700℃)で一定時間(5〜20分)加熱後冷却しCT撮影をおこなうというサイクルを繰り返した。CT撮影はSPring-8のBL20B2においておこなった(25keV、画素サイズ:3.14μm1344x1344マトリクス)。これにより、従来知られていない発泡様式を発見した。玄武岩質ガラスではサンプルの壁などから不均一核形成が始まり、数100ミクロンの泡へと成長していく。やがてサンプル壁のある場所より、多数の微細な泡(1ミクロン程度)が発生し、この泡に富む部分がシャープな境界を持ちながらサンプル内部に向かって一定速度で進行し、やがて発泡は停止する。流紋岩質ガラスでは均一核形成・成長によってのみ発泡を続けたのと対照的である。多数の微細な泡の生成によって、効率的に水を系外に逃がすことができるので、非爆発的な噴火が予想される。実際の高温での減圧発泡においても、この発泡様式がおこるとすれば、玄武岩質マグマの非爆発的な噴火を、今回新しく発見した発泡様式で説明することができる。今後、さらなる超高分解能でのCT撮影や、条件を変えた実験、また天然の玄武岩の組織観察などにより、これを検証することが必要である。
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