研究概要 |
本研究では、痴呆性疾患の画像診断を支援するため、SPECT画像とMRI画像を融合して用い脳の萎縮を伴わずに血流が低下している部位を検出する画像処理手法とソフトウェアFUSEの開発を行った。本年度は、FUSEの性能向上と詳細な評価を目的として、以下の3つの項目について検討を行った。まず、FUSEにおける解析の対象となるSPECT画像の画質を改善しFUSEの性能を向上させるため、同一患者のMRI情報を用いて血流低下部位がより検出しやすい高画質のSPECT画像を生成する新しい画像再構成法Anatomic-MAP法を開発した。Anatomic-MAP法は同一患者のMRI情報から患者が正常と仮定した時のSPECT画像を模擬したテンプレート画像を作成し、これと再構成画像の距離を評価関数に加えて画像再構成を行う考え方に基づいている。モデル画像と痴呆性疾患の実SPECTデータを用いた実験を行い、Anatomic-MAP法により血流低下部位がかなり検出しやすい高画質のSPECT画像が生成できることを示した。次に、SPECT画像から,血流低下部位を検出する従来の代表的手法である3D-SSPとFUSEの性能の相違を評価するため、16人の正常人SPECT画像にアルッハイマー型痴呆を想定して人工的に血流低下部位を付加した合成画像を用いた比較実験を行った。その結果、血流低下部位の検出はFUSEも3D-SSPもほぼ同等の感度で行えるが、血流低下部位以外の誤検出はFUSEの方が幾分少ないことが明らかとなった。最後に、昨年度までの研究で使用していた26症例(16正常例+10痴呆性疾患例)に加えて新たに10の痴呆性疾患症例を追加した臨床データでFUSEの性能を評価した。2年間の研究によってFUSEは3D-SSPと同等またはそれ以上の性能を持つことが明らかになり、脳血流画像解析の新手法として実用化になることが期待される。
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