研究概要 |
高方向分解能を有するHARD-MRIのデータに基づき,様々な処理手法の開発,および臨床応用に関する研究を行った.具体的には,以下の3項目を中心に研究を行った. 【線維交叉の前駆知識に基づく新しい線維モデリング手法の開発】 上縦束と錐体路の交叉関係を前駆知識とする新しい手法を提案し,有効性を示した.モデリング対象に沿って関心領域を設定する従来の方法は自由度が高く,どのような線維も描出可能となる反面,領域の設定数により操作が煩雑になり,限られたテンソルからの再構成テンソル場の使用による過度の平滑化効果を生じる場合があった.新手法では,テンソル場補間を交叉部である上縦束に限定することで上記の問題が抑制されており,臨床データの処理において実用性が高まった. 【テンソル場補間によるモデリングとHARD-MRIデータに基づくテンソル分離に関する検討】 我々のモデリング手法とHARD-MRIのデータの併用による線維交叉部でのテンソル分離について,臨床で撮影可能な30方向程度で良好な結果が得られることが明らかになった.これにより,健常者の詳細データの蓄積のみならず,患者データによる病態評価,異常検出にも応用が可能となった. 【リーマン計量によるテンソル補間時の膨張効果低減に関する検討】 テンソル場補間に関する基礎的検討では,対数ユークリッド法を用いることで,僅かながら膨張効果の低減があることが示唆された.また,膨張効果は拡散テンソルの第1固有値の低下,および第2,第3固有値の上昇という2つの要因によるものであるが,詳細な実験結果により,対数ユークリッド法の優位性は,後者の抑制に優れている点が明らかとなった.但し,現時点では,膨張効果の解消につながる根本的な解決には至っていないため,今後,新たな補間手法の開発が必要である. これら技術開発の他,診断・治療を問わず,様々な臨床応用を行い,論文発表を行った.
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