研究概要 |
胸部呼吸動態情報に基づく診断支援システムの開発のために,(1)局所肺換気と高い関連を示す肺野内のピクセル値(白黒濃淡の程度に相当する)の呼吸性変化を定量化する方法の開発,(2)その方法の臨床的有用性の評価,(3)定量化した機能情報をCT画像と関連付けて表示するシステムの検討,を行った. 正常10例,肺疾患8例を対象として,動画対応フラットパネルX線ディテクターによって呼吸性動態X線画像を取得した.画像データをパーソナルコンピュータに転送し,自作ソフトウエアによって肺野局所のピクセル値の呼吸性変化を解析し,横隔膜移動量や別に施行した呼吸機能検査の結果と比較検討を行った. 正常症例では,左右肺でほぼ対称的なピクセル値の変化を示した.すなわち,左右肺ともに上肺野に比べて下肺野の方がピクセル値の変化{X線透過性(換気)の程度}が大きい傾向がみられた.肺疾患症例では,たとえば間質性肺炎例では正常よりも大きなX線透過性の変化を示し,また,肺気腫例では,CTで確認されたair trappingの場所に一致してX線透過性のほとんど変化しない領域が観察された.すなわち,本研究による解析結果は呼吸生理学的に説明可能な局所換気の様相を呈した. 本法は横隔膜動態や肺の膨張・収縮程度の定量的な評価に有用であることが示唆された.また,従来の呼吸機能検査に比べて,本法は左右肺それぞれの肺機能や肺内局所の肺機能について画像医学的に評価できる点で優れており,有望な画像検査法として期待できる.
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