研究概要 |
「胸部呼吸動態情報に基づく診断支援システムの開発」に向けて,(1)局所肺換気と高い関連を示す肺野内のピクセル値の呼吸性変化を定量化する手法の開発とその臨床評価,(2)局所肺血流と高い関連を示す縦隔部および肺野内のピクセル値の心拍動変化を定量化する手法の開発,(3)本法により取得した機能情報を効果的に診断するための表示システムの開発,を行なった.18年度は,特に(2),(3)について主として開発研究を実施した. 正常症例7例における肺野内局所のピクセル値変化と,既知の循環生理とを比較し,本法による肺血流イメージングの可能性を明らかにした.心室・心房・大動脈弓・肺動静脈に相当する位置で計測したピクセル値と,心周期には高い相関が見られた.全ての正常症例において,心室収縮期には,心室のピクセル値は減少した.大動脈弓・肺動脈のピクセル値は急激に増加し,その後,次の心室収縮期まで緩やかに減少した.心室拡張期には,心房のピクセル値は急激に減少し,心室のピクセル値は増加した.心房のピクセル値は次の拡張期まで緩やかに増加した.肺野内のピクセル値は心拍にともない緩やかに変動した.すなわち,可視化されたピクセル値の変化は,肺門部から肺野末梢に拍出される既知の正常循環動態と一致した. 呼吸動態および画像診断のために,(1)動画像の再生が可能,(2)画像から定量化された動態情報を効率的に表示,(3)それらを詳細な形態情報と関連付けて観察可能,などの要件を満たす画像表示システムを開発した. 以上,動画対応FPDによる肺血流イメージングの可能性が示された.前年度の研究成果である,局所肺換気評価法と合わせ,本法は,簡便かつ迅速に機能情報を提供する新しい動態画像診断法として期待できる.また,微小なピクセル値の変化として,動画像上に表れる肺換気および肺血流の理解には,フレーム間差分による可視化が有用であった.本研究課題の成果はCTやMRIによる動態撮影に応用することも可能であり,胸部動態検査の発展に大きく貢献することが期待される.
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