研究概要 |
北アメリカ大陸のユタ州デルタ市に設置している宇宙線TA望遠鏡ステーションにおいてハイボリュームエアサンプラーにより大気を収集し、大気中のエアロゾルに付着して降下してくる宇宙線生成核種Be-7の濃度測定およびエアロゾルのサイズ分布、形状、化学組成の分析を始めた。2005年10月から12月の3ヶ月における山形とユタでの宇宙線生成核種Be-7の平均濃度は、それぞれ4.6mBq/m^3,6.9mBq/m^3であったが、11月中旬からの濃度変動が大きく異なり山形が減少していくモードに対してユタはほぼ一定であった。この結果は宇宙線による生成と大気運動による移動の効果を調べる指標として重要であるため年間観測を継続している。エアロゾルの粒径分布は水抽出して光学分析をした。ほとんど10μm以下であり1μm、3μm付近に構造があるようであるが、サンプル数を増やして分析する予定である。さらにエアロゾル粒径とBe-7およびPb-210の放射能濃度の関係についての5段階分級のアンダーセンサンプラーを使って予備観測を行った。PB-210はRn-222の娘核種であり地上起源であるためBe-7との比較に有効である。放射能濃度は1μm以下の粒子に対して最も多く粒径の増加に対して2段階のべき関数で減少していた。エアロゾルのべき指数は一般に-4程度といわれているが、この測定では-2.3と-0.9であった。放射能とエアロゾルサイズの関係は関数変化が異なったいる可能性がある。なお、電子顕微鏡でのX線元素分析ではSi, Fe, K, Caのパターンが多く鉱物粒子である可能性が高いことを示している。
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