研究概要 |
北アメリカ大陸のユタ州デルタ市の宇宙線TA望遠鏡ステーションにハイボリュームエアサンプラーを設置して大気中のエアロゾルサイズ分布、形状、化学組成の分析およびエアロゾルに付着して降下してくる宇宙線生成核種Be-7の濃度測定を粒径別に行った。2005年10月から1年間における山形とユタでのBe-7の平均濃度は、それぞれ4.9mBq/m^3,8.8mBq/m^3であり観測点の高度依存性があることが確かめられた。また、気象データとの比較からデルタ市でのBe-7年変動は日射量と良い相関があることが分かった。この結果は宇宙線による生成と大気運動による移動の効果を調べる指標として重要である。エアロゾルの粒径分布は、非水溶性成分に対してほとんど10μm以下であり1μm、3μm付近に構造があり、濃度は2.7×10^4〜4.5×10^5個/m^3であった。水抽出して光学分析をした。さらに5段階分級のアンダーセンサンプラーを使ってエアロゾル粒径とBe-7の放射能濃度の関係を調べた。Be-7濃度は1μm以下の粒子に対して最も多く2μm以上に比べて約10倍であった。また、低気圧通過時、エアロゾル濃度は約10倍に達した。水溶性の硫酸イオン、硝酸イオン、塩素イオンも同様な変化を示した。なお、電子顕微鏡でのX線元素分析ではSi, Fe, K, Caのパターンが多く鉱物粒子である可能性が高く電顕撮像で数μmの破片が多かった。 これらのエアロゾルとBe-7の性質と濃度変動データと気象データを比較することにより大気の運動およびエアロゾルの挙動を推定できることが分かった。
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