強酸で処理されたカーボンナノチューブ(CNT)は水中で負の表面電位を持つ。そのCNT水分散液を2枚の平行平板ITO電極の間に注入して、直流電場を印加すると、CNTは陽極表面に向かって電気泳動する。最初は陽極面内で均一に分布していたCNTは、ある条件下では、局所的に集合してCNT濃度の差による幾何学的なパターンを作り出す。このパターンは電場が印加されているときのみ発現し、電場を消去するとCNTは拡散し、パターンは消滅する。このパターンを解析した結果、多角形のセルが現れる初期(セルパターン)と、セルの交点に向かってCNTが集合し、蝶々のような形を作る後期(バタフライパターン)に大別できることがわかった。セルパターン発現には閾値電位が存在するが、電位はパターン形状には影響せず、電位が高くなるほどパターンの出現速度が速くなる。また、セルの大きさは電位や電場に依存せず、電極間距離と同じであることが判明した。これらの結果から、セルパターンはベナール対流の温度差を電場(電位)で置換したような現象であるといえる。以上の結果は、陽極を上部、陰極を下部に配置した場合である。重力の影響を調べるために陽極を下部にしたところ、セルパターンは出現したが、バタフライパターンは発現しなかった。また、両極を垂直に立てた場合(電場による作用と重力が直交した場合)、システムは外部パラメータに非常に敏感になり、例えば溶液全体が一方向へ大きく回転するようなものも含め、多様なパターンが出現した。今後は、重力の影響について、詳細に検討する。
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