触媒活性種となり得る、絶縁性酸化物基板上に分散して固定化された単核〜4核程度の金属核をもつ錯体または少数金属原子からなるクラスターを対象とし、その電子状態を精密測定するための新規スペクトロスコピーの開発を進めてきた。具体的には、共鳴トンネリングにより固定化錯体に単一の電子を与えたり逆に引き抜くことにより探針との間に生じる静電気力を非接触原子間力顕微鏡(NC-AFM)で検知し、電子状態を測定する。長距離でも顕著な応答を示す静電気力の性質を生かして高分解能電子状態測定を実現する。 NC-AFM顕微鏡部、2ch function generator、digital storage oscilloscopeを主部分とするスペクトル測定システムを構築した。0.5Hz程度の周波数変化の検出は容易でクラスター上の単一素電荷の検出は十分可能である。また、注入される電荷の検出の時定数は約0.6msと見積もられた。原子数が規定されたAuクラスター(Au_<25>(GS)_<18>)をへき開した(絶縁性)マイカ基板上に分散吸着し測定を試み、Auクラスター上でバイアス電圧変化に対してステップ状の周波数変化を捉えることに成功した。これは探針からAuクラスターへの単一電荷の注入の結果として生じる静電気力を捉えたものと考えられる 新規分光法測定に適した系として、NiAl(110)上に調製したAl_2O_3絶縁性薄膜上に2-4個のRh原子からなるクラスターを均一分散させた試料を作製することに成功した。Rh_2(OAc)_4前駆体水溶液を真空噴霧し、真空中で493Kまでゆっくり加熱するだけで生成する特異な系であることが明らかとなった。
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