研究概要 |
1.極微観察に適した固相重合系の探索 以下の重合が無触媒で加熱のみによって固体状態を保ったまま進行することを見出した。 1)1,5-ビス[ヒドロキシ(4-メチルフェニル)メチル]ナフタレンが、電子供与性の置換基(メチル基)の作用によって中間体のカルボカチオンが安定化されることにより、熱重合(175℃)してポリエーテルを生成する。 2)アノマー位にフッ素を有し他はすべて未修飾の水酸基からなるいくつかのフッ化糖類が加熱(100-160℃)のみによって脱HFを伴って重縮合し、多分岐多糖を生成する。 3)2,5-ビス(ヒドロキシメチル)チロシン誘導体が、フェノール残基の自己触媒作用によって120℃で脱水重縮合する。 2.光学顕微鏡による固相重合のその場観察 上記1)〜3)の固相重合について、モノマーの結晶をホットステージ上で加熱し、光学顕微鏡によって観察を行った。いずれの場合も、偏光下で明るく光っている結晶部分が重合の進行とともに暗くなり、非晶質ポリマーの生成が示唆されたが、重合前の元の形態は維持されることがわかった。 3.AFMによる固相重合のその場観察 AMFを使って、3)の重合について、さらに微小な解析を行った。その結果、125℃で加熱後6時間までは全く結晶形態の変化が見られないが(誘導期)、その後、急激に形態が変化し、10時間後には流動が起こっていることが観察された。誘導期ついては、光学顕微鏡観察においてもその存在が示唆された。結晶に欠陥が生じそこから反応が始まるためには、ある程度の加熱時間が必要であり、一旦反応が始まるとそこを基点に急速に重合が進行するものと推察される。反応によって結晶格子が壊れ、モノマー分子とポリマー分子の局所的な混融状態によって流動が起きていると考えられる。ナノレオロジー変化のマッピング等、今後研究を続ける必要がある。
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