研究課題
固体状態で起きる光誘起結晶相反応による分子構造・結晶構造の変化を分子・原子レベルで精度よく時分割解析することが本研究の目的である。このためには、リアルタイム性を持つ二次元X線検出器で逆空間における変化を広く調べることが必要であり、新規に開発されたMSPG(Micro Strip Gas Chamber)を利用した回折測定を行うことが重要である。また、結晶相反応の結果、単結晶性が保たれない場合は粉末回折データ(XRD)からの結晶構造解析手法である、SDPD(Structure Determination from Powder Data)をも用いて構造変化を解析することが可能である。これらの手法の組み合わせにより、初めて固体中の非可逆な変化を時間軸に沿って解析し理解することが出来る。MSGC型検出器をピクセル型に展開したMPGC(Micro Pixel Gas Chamber)は、10cm角の検出面積と、フォトン計測によるリアルタイムX線検出、および放射光の高フラックスX線の計測が可能という特徴を持つ次世代X線検出器である。これを用いた世界最初のX線回折測定を高エネ研PF(BL14A)で行った。ピロメリット酸水和物の脱水非可逆相転移について粉末結晶を加熱しながら、粉末X線回折データの時間変化を時分割測定したところ、相転移が200ミリ秒以内で起こる様子を時分割観測することに成功した。さらに、粉末結晶構造解析(SDPD)により、固相反応前後の結晶構造から分子の動的変化や光反応性などを明らかにした。4メチルピリドンとトリメシン酸の共結晶を加熱し相転移後の結晶Bでは、ピリドンの[4+4]光二量化反応が観察された。粉末結晶BのXRDから実空間法による粉末結晶構造解析を行った結果、ピリドン同士は結晶中で[4+4]光二量化反応を許容する約3.8Åの距離で近接していることがわかった。つまり、相転移によりピリドン分子が180°回転し、初めて光反応性を得ることが明らかとなった。
すべて 2006
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