時間分解XAFS法は特に金属担持酸化物触媒などの不均一反応系についての動的構造変化や電子状態変化の知見を得る上で最も優れた手法であり、分散型X線光学系を備えるDXAFS法では必要なX線エネルギー領域のデータを一度に得ることが可能であるために、繰り返し測定の必要がなく、不可逆な反応過程のメカニズム解析に威力を発揮する。本研究では、これまでにPF及びPF-ARで開発したDXAFS装置の分光結晶(ポリクロメーター)を二結晶化することにより、エネルギー分解能と測定精度を飛躍的に向上することを目的としている。 平成17年度は、現状のDXAFS装置でのポリクロメーターの分光状況を定量的に評価し、間接冷却を施した固定湾曲率のブラッグ型結晶ホルダーで得られるX線が、水平面内の位置とX線エネルギーの間に高い直線性を持って分散していることを明らかにした。また、同じく間接冷却で固定湾曲率のラウエ型結晶ホルダーを開発し、その分光X線も同様に第二ポリクロメーターで二度目の分光を行うのに十分な直線性が得られることを確認した。これらの知見を基にして、二結晶DXAFS装置の設計・開発を行った。一方で、空間分解能が十分に高い一次元検出器を用いて、粉体試料や金属箔試料、溶液試料などの透過X線の分散状況を調べ、特に粉体試料においては試料上での散乱X線が水平面内に広がることを明らかにした。これは、透過法で測定するDXAFS法において検出データのエネルギー分解能の劣化に直結するものであり、二結晶DXAFS装置の第一集光点に試料を配置し、その透過X線を第二ポリクロメーターで分光することによって初めて、目的とするエネルギー分解能が達成されることを明らかにした。 さらに、金属担持酸化物触媒とCOやNOなどの有害ガスを反応させるための試料セル部および反応開始機構を開発し、有害ガスの迅速導入によるバッチ法での反応追跡と不活性ガス又は前処理ガスから反応ガスへの迅速切替によるフロー法での反応追跡を可能にした。これらの試料セルは本特定領域研究における共同研究に適用し、銅担持ゼオライト触媒の不均化反応機構やニッケル担持シリカ触媒の還元反応機構の研究を展開した。
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