研究課題
時間分解XAFS法は特に金属担持酸化物触媒などの不均一反応系についての動的構造変化や電子状態変化の知見を得る上で最も優れた手法であり、分散型X線光学系を備えるDXAFS法では必要なX線エネルギー領域のデータを一度に得ることが可能であるために、繰り返し測定の必要がなく、不可逆な反応過程のメカニズム解析に威力を発揮する。本研究では、これまでにPF及びPF-ARで開発したDXAFS装置の分光結晶(ポリクロメーター)を二結晶化することによってエネルギー分解能と測定精度を飛躍的に向上させ、金属を担持した酸化物触媒の電子移動反応機構を解明することを目的とした。平成18年度は、平成17年度に開発した高分解能時間分解DXAFS装置並びに反応を迅速に開始するための反応セルを用いて、銅を担持したゼオライト触媒における銅の酸化還元反応機構の解明を行った。窒素酸化物の還元除去能力を有するゼオライトに担持した銅触媒では、その触媒反応過程で生じるCu(I)種が重要な鍵化学種であると考えられていた。そこで、まずは定量的にCu(II)状態で存在する触媒試料をイオン交換法によって調製し、それを反応セル中で真空環境下に置いた後、COガスを迅速導入することによって開始される銅の還元反応過程を時間分解DXAFS装置を用いて追跡した。その結果、Cu(II)→Cu(I)→Cu(0)のように銅の還元反応が進行することを直接観測した。更に、得られた結果を反応速度論を用いて解析することによって、少なくとも2種類のCu(I)状態が存在することを明らかにした。また、構成化学種の構造解析から、最初の還元過程でフラグメント化されたCu(I)種が生成した後、それらの自己会合によってCu_2O類似状態になり、引き続く2段階目の還元過程でCu(0)状態へ至ることが明らかになった。その結果を基に、Cu(II)の触媒試料へCOとNOの混合ガスを迅速に導入する反応を種々の条件下で観測し、反応過程でCu(I)状態が生成するものの、その後にCu(II)状態が再生する触媒反応過程を直接観測することに成功した。その反応速度のCOまたはNOガス圧に対する変化から、COによって生じるフラグメント化されたCu(I)化学種がNOを還元する活性化学種であることを証明することに成功した。
すべて 2007 2006
すべて 雑誌論文 (6件)
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