研究概要 |
様々な構造既知のAl化合物を対象にAlK殻吸収端XANESスペクトルの測定を行った。XANESスペクトルには1566,1568,1572eV付近に特徴的な3つの吸収が現れること、更に1566eVと1568eVの吸収は、それぞれ4配位AlO_4種と6配位AlO_6種の指標となることが明らかとなった。3つのGaussian-Lorenzianと2つのarctangent関数を組み合わせてAl K-edge XANESのピーク分離を行うとGaussian-Lorenzianの面積から,多くの既知物質に関して4配位AlO_4種と6配位AlO_6種を定量的に解析できることが明らかとなった.これにより例えば様々なアルミナ相に含まれるAlO_4種とAlO_6種の割合を求めることもできるようになり,より定量的で詳細な議論が可能となった. 更にAlO_4種とAlO_6種の両方のAlサイトを有するNiAl_2O_4に対して電子顕微鏡を用いてAlK-edge ELNESスペクトルの測定を行ったところ、ELNESスペクトルにおいても、1566eVと1568eV付近に特徴的な吸収が現れた。第一原理計算を用いてELNESスペクトルのシミュレーションを行ったところ^<1)>、1566eVと1568eVの吸収は、それぞれ4配位AlO_4種と6配位AlO_6種に帰属されることが示され、上記半現象論的解析の理論的裏づけを行うことができた。ELNESスペクトルに対して、3つのGaussian-Lorenzianと2つのarctangent関数を組み合わせてピーク分離を行い、4配位AlO_4種と6配位AlO_6種の割合を求めたところ理論値と一致し、XANESに対して行った上記半現象論的解析を、そのままELNESにも応用できることが分かった。
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