単一細胞へのプローブ導入とセンシングに関し、平成17年度は以下の課題にとりくみ、下記の成果をえた。 1.3重にシグナル増幅可能な遺伝子センシング法の開発:リボレギュレーターを用いる画期的な遺伝子センシング法(シグナル二重増幅)を既に報告しているが、標的のRNAとプローブDNAとの二重鎖形成に際し、RNA加水分解酵素(RNase H)を共存させると、二重鎖内のRNAが特異的に切断し、レポータータンパクの発現量が飛躍的に増大し、したがって検出感度が大幅に向上することを見出した。 2.遺伝子運搬体のサイズ制御:リポソーム(脂質の2分子膜集合体)を核酸(DNAやRNA)のキャリアとして用いようとすると容易に融合(fusion)する。これを避けるために表面をセラミック(シリカ)被覆したリポソーム(セラソーム)を用いた遺伝子運搬系を検討した。期待どおり、セラソームはDNA(プラスミドDNA)やsiRNAとの相互作用において融合せず、ウイルスサイズ(60-70nm)を維持した画期的なキャリアであることが判明した。これは奈良先端科学技術大学院大学の菊池教授の研究室との共同で行った。 3.薬物運搬系のサイズ制御:ゾレドロネートと呼ばれるビスリン酸化合物はアポトーシスを誘起し、乳癌や骨そそう症の治療薬として使われる。このものは糖クラスター化合物と強く錯化し、10-50nmサイズの複合体を与え、サイズ許容のエンドサイトーシスにより効率よく細胞に取り込まれることを見いだした。
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