平成17年度には、顕微鏡下にYAGレーザー基本波パルスを試料水溶液中に集光し、衝撃波を発生させ、その分子オーダーにおける影響を検討することを計画した。そのための衝撃波発生-時間分解蛍光分光測定装置を開発し、ピラニンやピレン・γ-シクロデキストリン2:2包接体などのいくつかの分子および分子集合体水溶液中の衝撃波に対する蛍光挙動の影響を調べることに成功した。その結果、ピレン・γ-シクロデキストリン2:2包接体などの分子集合体では、衝撃波発生後、発生点から200-300μm離れた観測点における蛍光強度は、時間とともに増大した。しかし、ピラニンでは蛍光強度は衝撃波の影響を受けなかった。このことから、衝撃波発生点から分子が衝撃波の進行方向に移動し、その速度は分子の流体力学的半径が大きい程大きいことが示唆された。このときの速度は概算すると、およそ1000m/s程度の亜音速になる。このことについて、現在、特許出願および論文投稿の準備中である。一方、スペクトルの変化については、1-アニリノナフタレン-8-スルホン酸・β-シクロデキストリン1:1包接体について、衝撃波が観測点に到達する時刻付近で圧力によるものと思われるわずかな変化が見られた。その他、ガラス表面上のアルキルシラン単分子膜やポリエチレンテレフタレートフィルムについて表面の加水分解が衝撃波により促進されることを見出した。これらの結果についても論文投稿準備中である。
|