1.レーザー誘起液中プラズマの緩和過程 レーザー誘起衝撃波の発生に先立って水溶液中にマイクロメートルオーダーサイズのプラズマ状態が生成することは良く知られているが、その緩和により発生する温度、圧力に関する情報は十分ではない。NaClなどのアルカリ金属塩水溶液でのプラズマ発光の時間分解測定により、アルカリ金属の原子発光が観測されることを確認した。このとき、プラズマ状態と原子励起状態が共存する時間領域では原子発光線がDoppler拡がりでは説明できない異常なブロードニングを示すことを見出した。このことは、プラズマ状態/高温ガスが微小領域中、非常に高密度にあるために強いStark効果を受けることを示唆している。固体中および気液、固液界面での発光スペクトル測定もプラズマ状態/高温ガスの閉じ込め効果を支持した。また、Li原子の2つの発光線(3^2D→2^2P、2^2P→2^2S)の発光強度比の時間変化から高温ガスの温度の時間変化を見積もり、プラズマ発光およびNa原子発光の干渉フィルターを用いた分光写真撮影から、プラズマが緩和した高温・高圧ガスの温度降下は断熱膨張によるものではないことを明らかにした。 2.レーザー誘起衝撃波による分子の移動 高分子やタンパク、あるいは色素J会合体などの大きな分子、分子集合体を含む水溶液中にレーザーを集光し、衝撃波を発生させると、発生点から200μm程度離れた溶液中の位置からの蛍光強度は、衝撃波発生用レーザーパルスからの遅延時間に対して増加・減少の変化を示した。ピラニンなどの小分子ではこのような時間変化を示さず、衝撃波の伝播に伴い大きな分子が移動し、局所濃度が変化するものと結論した。この現象は、マイクロ流路と組み合わせた分子注入および分子や微粒子の分離・分析手法の基本原理としても意義深いものであると考えられる。
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