無電解メッキ法を用いて、銀イオンを還元することで探針先端に球形状の銀ナノ粒子を生成する方法を新たに検討した。その結果、銀イオン濃度、pH等をパラメーターとすることで、銀ナノ粒子径を自由に制御できることを確かめた。効率的に局在プラズモンを励起する粒径サイズに最適化したことで、高い増強度を有するナノ探針を再現性高く作製できることを示した。また、進相軸が異なる4枚の1/2波長板を組み合わせた位相板を用いることで、ナノ探針に照射する光の偏光方向を制御する方法を考案し、局在プラズモンを励起する偏光成分だけを供給する照明光学系を構成した。 さらに、レーザーパルスに同期して、コヒーレントアンチストークスラマン散乱光のフォトン数を検出するゲーティング機構を取り入れ、暗電流の低減を図った。この際、アバランシェフォトダイオードの最大カウントレートを考慮し、EOモジュレーターによりあらかじめチタンサファイアレーザーパルス数を制御した上で、ゲーティングを行った。また、パルス数を低減することで、試料に対するダメージも軽減されることも確かめた。 開発した装置を用い、分子数数十個(サブゼプトモル10^<-22>mol)という極微量のDNA塩基分子の検出を試みた。具体的には、アデニン(A)塩基を100個含む合成DNA(poly-d(A)_<100>)とグアニン(G)塩基分子30個を含む合成DNA(poly-d(G)_<30>))の近接場ナノラマンスペクトルを測定した。アデニンに特徴的な五員環伸縮の振動モードのピークを1337cm^<-1>と1384cm^<-1>に、グアニンに特徴的な五員環・六員環伸縮の振動モードのピークを1375cm<-1>と1480cm<-1>に観察した。これらの結果から、分子数数十個レベルの検出感度でDNA塩基分子種を識別、分析できることを示した。
|