研究概要 |
本研究では水素化脱硫触媒の活性相であるCo-Mo-S相をCo(CO)_3NOを用いたCVD法によって選択的に合成し,その構造および表面反応メカニズムを解明することを目的としている.本年度はこの目的を達成するため,3つのテーマについての研究を計画に基づいて行った.本年度における各研究テーマの研究成果を以下に示す. 1.CoMoSおよびCoWS構造のXAFSによる構造決定 CVD-Co/MoS_2/Al_2O_3のCoK-吸収端FTの解析を行い,Co-Mo-S構造の精密な局所構造解析を試みた.磁化率測定の結果をふまえ,Co-Co shellを含めた解析を行い,合理的な構造パラメータを得た.この結果は,以前に提案されたモデル構造を支持するものである.さらにMoS_2のMoエッジ,Sエッジ両方についてCo-Mo-S局所構造モデルを構築し,理論計算によるEXAFSのシミュレーションを行った結果,両者ともCo原子がSで架橋されたダイマー構造をとり得ることが示唆された. 2.CVD-Co/MoS_2触媒でのセレノフェンの水素化脱セレン反応挙動の解析 セレノフェンの脱セレン反応を行うことにより,反応挙動とS-Se交換反応を検討した.特にSe/Co比に注目し,CVD-Co/MoS_2/Al_2O_3について検討した結果,H_2Sの生成量は,S/Co比が2までは容易に交換し,それ以後ゆっくりと交換反応が進行することが明らかとなった.交換は最大S/Co=2.6まで進行した.このことは,1で提案されたモデルとも矛盾しない.セレン化されたCo-Mo触媒のSe K-吸収端,Co K-吸収端XAFSの測定 2.の研究に関連し,SeおよびCoの局所構造の反応の進行にともなう構造変化をXAFSによって追跡した.反応の進行とともに,Co-Sに帰属されるピークがCo-Seへと変化していく様子がEXAFSフーリエ変換から見いだされた.
|