研究概要 |
本研究では、マウスES細胞を光ピンセットで捕捉・固定してフローセル中で培養し、サイトカイン、栄養素などの外的因子を添加した際のES細胞の反応ダイナミクスを顕微鏡で逐次追跡することを目的とする。今年度は,この計測システムを構築し,レーザー照射下でも培養が可能なことを明らかにした。 顕微鏡と赤外線レーザー(Nd^<3+>:YAGレーザー、λ=1064nm)を組み合わせて,空気ばね防振台の上に光学系を構築し,光ピンセットを作製した。細胞の形態変化を記録するために顕微鏡にデジタルカメラを取り付け,一定時問経過毎に自動的に静止画を撮影してパソコンに保存できるようにした。顕微鏡上で培養を行うために、長期培養装置を用いた。 装置を37℃5%CO_2に設定し、顕微鏡に設置した後、光ピンセットで細胞を浮遊させ、細胞の観察を行った。まず、培養装置を用いて顕微鏡上で通常の培養が可能か調べた。レーザーで捕捉せずディッシュ底面に接着させたままで細胞を培養した。しかし、培養開始から数日後に細胞がディッシュ底面から離れ、死滅している様子が観察された。この原因を色々検討した結果、観察のために照射し続けているハロゲンランプの照明の影響が大きいと考えた。そこで、次に遮光下で培養を行い、細胞観察時にだけ照明が当たるようにシャッターを取り付けた。すると細胞は長期培養を続けても細胞はディッシュ底面に接着したままで、最終的に心筋細胞まで分化させることもできた。 最後に,光ピンセットで細胞を浮遊させ培養を行った。シャッターを取り付けて、一定時間毎に観察した。培養開始直後、細胞はダイナミックな動きを示し、次に丸い形状になった。その後、接着培養細胞のときと同様に微小な動きを繰り返し、12時間経過後、再びダイナミックな動きに変化した。これは細胞分裂と考えられる。これによりレーザーで浮遊させたまま単一で細胞を培養することが可能であることが分かった。
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