研究課題
細胞壁をもつ植物細胞への遺伝子導入法として、DNAをコーティングした金属微粒子を衝撃波で植物体に打ち込む遺伝子銃がよく用いられるが、細胞の生存率が低く発現効率が悪いため、より優れた方法が求められていた。一方、葉緑体はその色から明らかなように緑色光を利用してはいない。遺伝子工学的手法で葉緑体にデンプン以外の有用物質を産生させようとした場合、増感系を持ち込むことでエネルギー利用効率の向上が期待される。そこで、本研究ではDNAを効率よく吸着し、緑色光領域にプラズモン吸収帯をもつ金ナノ粒子の集合体をレーザ爆裂によって植物細胞内に導入し、遺伝子発現とプラズモン増感の両方を狙うことを試みた。まず、モデルとして、単離した葉緑体チラコイドに金コロイドを吸着させてプラズモン増感を試みたが、吸収スペクトル上には強いプラズモン吸収を示すものの、クロロフィルの蛍光励起スペクトルではプラズモン帯はサイレントであった。一方で、平滑金膜上にチラコイドを吸着させた系における励起スペクトルではプラズモン励起に特有の長波長部の増強がみられた。コロイドで増感がみられなかったのは、コロイド表面にスペーサがないためクロロフィルとの距離が近すぎ、エネルギー移動消光が起きてしまったものと思われる。対策としてコロイドの表面修飾を検討している。遺伝子導入についてはパルスレーザを所有している研究室との共同研究を企画している。本課題の対照系である平滑金表面を用いた系においては、新規な表面評価法として、電気化学表面プラズモン分光測定系を開発し、成果を得た。これは、金表面における酸化還元反応にともなう表面の屈折率変化を観測するもので、フェロセニルアルカンチオールの自己組織化単分子膜の酸化還元反応にともなうSPR角の変化を明瞭に観測することができた。さらに、これを二次元測定系に拡張し、表面に吸着した液滴の移動を観測することができた。
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