結晶構造を自由に制御し、望みの構造や物性が光により可逆的に変化する有機結晶材料の創製を目指している。フォトクロミック化合物は光により可逆的に異性化する物質であり、結晶状態で高効率に高変換率まで反応が進めば、固体物性の大きな変化が期待できる。そのためには、高効率に高変換率まで反応するフォトクロミック結晶の創製と光反応ダイナミクスの解明が必要不可欠である。本研究では、微結晶成長過程の観察と作製、高効率で高反応率まで反応するフォトクロミック結晶の創製、および光可逆な結晶形状変化について検討した。 昨年度まで研究を続けてきたジアリールエテン結晶において、光照射に伴う可逆な形状変化が見つかり、形状変化と反応率の関係を明らかにした。紫外光照射によって、結晶外形の角度が最大5°変化した。また、その変化は反応初期では起こらず、反応が20-30%進行してから起こった。X線構造解析と合わせて結晶形状変化の機構を明らかにした。紫外光照射によって高反応率まで結晶状態を維持したままフォトクロミック反応が進行し、結晶格子変化によって結晶形状変化がもたらされたと考えられる。さらに、100%まで反応が進行するジアリールエテン結晶の作製も行った。紫外光照射によって、閉環反応だけでなく開環反応も同時に起こるため、開環反応量子収率の小さな化合物を設計することが重要な課題である。顕微赤外分光を用いたin Situでの反応の追跡およびHPLCによる直接的な反応率の測定を行い、98%以上反応が進行することが明らかとなった。反応の進行に伴い着色体の吸収異方性は維持されており、反応が結晶状態を保ったまま進行していることが確認された。
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