研究概要 |
光励起状態における分子認識能を励起状態や基底状態で働く置換基間相互作用、固体表面への吸着、芳香環同士のπ-π相互作用、双極子-双極子相互作用、水素結合などによって制御し、高効率・高選択的な光化学反応や特異な性質をもつ光機能分子を開発することを目指して研究を行ない、以下の成果を得た。 (1)ピレン環の1,3,6,8位にトリメチルシリルエチニル基を導入した化合物の吸収・蛍光特性について検討したところ、導入したトリメチルシリルエチニル基の数が増えるにつれて吸収極大が長波長側へシフトし、モル吸光係数と蛍光量子収率が増大し、蛍光寿命が減少することが分かった。特に1,3,6,8-テトラキス(トリメチルシリルエチニル)ピレンの蛍光量子収率は0.99に達し、ほぼ蛍光放射のみで基底状態へと失活する分子の開発に成功した。 (2)ピレンに長鎖アルキル基を有する官能基を導入し、長鎖アルキル基の自己集合能に基づく吸収・蛍光特性の変化について検討した。1,3,6,8-テトラキス(ジメチルオクチロキシシリル)ピレンの蛍光をジクロロメタンを溶媒として1×10^<-2>Mの濃度で測定したところ、ケイ素官能基の立体障害のためモノマー発光のみを示したのに対し、1,3,6,8-テトラキス(ジメチルオクタデシロキシシリル)ピレンではオクタデシル基の自己集合能に基づく顕著なエキシマー発光が観測された。 (3)3位に置換基をもつペリレン誘導体の吸収・蛍光特性について検討した。その結果、ペリレン環の3位へのアルキニル基やシアノ基の導入により極大吸収波長と蛍光極大がともに長波長側に移動することが分かった。分子軌道計算によって求めたHOMOとLUMOのエネルギー差はその現象を支持した。また、3-(オクチン-1-イル)ペリレンの光酸素酸化反応について検討したところ、一重項酸素による酸化反応が進行することが明らかになった。
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