1.4水和物、無水物A、無水物B間で相転移の分岐現象とサイクル現象が組み合わさって誘起されるデオキシグアノシン5'-リン酸二ナトリウム(Na_2dGMP)結晶の相転移機構の解明を目指し解析を進めた。4水和物は高湿度、高温条件で直接無水物Bへ移行するが、逆転移は中間状態(M相)を経るというサイクル様の転移を起こす。M相の構造解析に成功し、M相は2水和物で、分子のコンフォメーションは4水和物とは異なっており、無水物Bに類似していることが明らかになった。従って、分子のコンフォメーション変化は、M相から4水和物への転移に付随して起こる。4水和物-無水物B間のサイクル様相転移現象においても、4水和物から無水物AおよびBへの温湿度条件に依存した相転移の分岐現象と同様、結晶相転移に分子のコンフォメーション変化がリンクしていることがその要因となっていることが示唆された。また、相転移の空間展開の解析を目的とし、温湿度制御下での位相差顕微鏡、微分干渉顕微鏡等を用いた解析を開始した。 2.相転移のトリガーとなる結晶水の時間的揺らぎを明らかにすることを目的して、シチジン5'-リン酸二ナトリウム(Na_2CMP)9水和物の分子動力学計算を行った。ナトリウムイオンに水和している結晶水の挙動の表現には、水のパラメーターとして分極関数を用いることが必須であることが示された。今後分極関数を用いた解析をすすめ、相転移における水和水の役割を明らかにしていくことを予定している。
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