研究概要 |
本研究課題においては、精密有機合成への展開を志向したニッケル錯体による多成分付加型二酸化炭素固定化反応の開発を目指し研究を行った結果以下のような研究成果が得られた。 1.アレニルアルデヒドへの二酸化炭素固定化-環化反応の開発 我々が既に報告しているアレンへの二酸化炭素固定化反応を分子内カルボキシル化-環化反応へと展開した。即ち、分子内にアレンとアルデヒドの双方を有するアレニルアルデヒドに対し、TMEDAを配位子として用い、化学量論両の0価ニッケル錯体存在下、1気圧の二酸化炭素を反応させると、アレン部位への二酸化炭素固定化によるアリルニッケル種生成と、アリルニッケル種の分子内アルデヒドへの求核付加が連続して進行し、環化体が好収率で得られた。本反応は複素環構築反応への適用も可能であった。 2.新規多成分付加型二酸化炭素固定化反応の開発 分子内に二置換アルキンと電子不足アルケンを持つエニンをニッケル錯体及びDBU存在下、1気圧の二酸化炭素と反応させると環化とカルボキシル化反応が同時に進行することを見出した。本反応は多環式複素環構築にも展開可能であり、現在、多環式天然物の合成を検討中である。また、これら環化反応の開発と平行し、1,2-ジエンにケイ素置換基が付いたシリルアレンへの二酸化炭素固定化反応を検討した結果、シリルアレンをDBU、ジメチル亜鉛及び触媒量のニッケル錯体存在下二酸化炭素と反応させると、二分子の二酸化炭素が一挙に付加する触媒的ダブルカルボキシル化反応が進行することを見出した。さらに、本反応をRas FPTase阻害活性を持つ天然物chaetomellic acid A anhydrideの短工程全合成に展開することができた。
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