ヒト苦味受容体T2R16に対するアゴニスト活性の検討 我々は今回、苦味受容体mT2R5とGiαの融合タンパク質を利用して苦味の受容体がGiと共役できることを示すことができた。これまで苦味受容体は味雷細胞に特異的なgustdusinと共役して働くと考えられていたため、苦味受容体の発現が他の臓器で確認されてもその意義は議論の対象にならなかった。しかし今後は各臓器で発現している苦味受容体の働きが今後ホルモンやオータコイドの受容体と同様に注目されると考えられる。そこでさらに腎臓などでの発現が観察され、phenyl-β-D-glucopyranosideによって活性化されることが報告されているヒトの苦味受容体T2R16を用いて以下のような検討をした。 (1)京都薬科大学の吉川先生、松田先生より生薬由来の苦味物質として、ニガウリ(Momordica charantica)とコロシント(Citrullus colocynthis)の抽出画分をいただいた。このうちコロシント果実のメタノール抽出物の酢酸エチル可溶性画分にT2R16に対するアゴニスト活性が見出せた。そこでさらにこの画分の主成分であるcucurbitacin E 2-O-β-D-glucopyranosideをいただき、その活性を検討した。T2R16のアゴニストであるphenyl-β-D-glucopyranosideとこの化合物はグルコースの1位にphenyl基がついているかステロイド骨格がついているかの違いでありその活性が注目されたが、cucurbitacin E 2-O-β-D-glucopyranosideにT2R16のアゴニスト活性は検出できなかった。今後、他の成分にアゴニスト活性があるかどうか検討していきたい。 (2)帝京大学薬学部の高橋先生よりグルコースとさまざまな糖からなる非天然型の合成糖ダイマー31個をいただいた。この中の数種類について弱いながらT2R16のアゴニスト活性が検出された。今後、この活性と糖の構造の関係についてさらに詳しく検討していきたい。
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