1)ナカドマリンAの不斉全合成 これまでスピロピペリジン環に結合したフラン環の求核性をフラン-イミニウムカチオン環化反応を検討してきた。スピロピペリジン環に直結したフラン環は高収率にて閉環体を与え、本反応を利用しナカドマリンAの中心4環性構造の合成に成功し、さらに全合成を達成した。本年度は、不斉合成効率の向上をめざし、4-オキソピペリジンカルボキシレートの不斉アリル化反応とジアステレオ選択的マイケル反応を精査した。その結果80%以上の不斉収率にて不斉アリル化が進行することが判明した。また基質構造を変えることにより、分子ないマイケル環化反応のジアステレオ選択性も著しく向上した。 2)イルシナールAの全合成 先のフラン-イミニウムカチオン環化反応において結合炭素鎖の影響を検討したところ、メチレン鎖1および2の場合にも環化反応が選択的にフラン2位で起こり、また単一のジアステレオマーが得られた。新たに生じた4置換不斉炭素の立体化学はマンザミンAのB環上4置換不斉炭素の立体化学と同一であった。そこで本反応を利用してマンザミンAの合成および生合成中間体であるイルシナールAの全合成研究を行った。その結果、市販の4-オキソピペリジンカルボキシレートより47工程通算収率1.48%にて全合成を達成することができた。 本合成はラセミ体合成ではあるもののイルシナールAの世界で3番目の合成であり、また通算収率は最も高い。さらに光学活性体の合成、および工程数の短縮、活性誘導体の合成研究へと展開する予定である。 3)マンザミンBの合成研究 光学活性AB環システムの効率に成功した。
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