研究概要 |
(1)生物活性環状デプシペプチドポリオキシベプチン類、パプアミド類、ハリベプチン類の合成 種々の非蛋白性アミノ酸を含み、ユニークな生物活性を有する天然由来環状デプシペプチドの合成研究を行った。この研究の中でアンチ型β-ヒドロキシ-α-アミノ酸が大量に必要になり、これまでに2種の動的速度論的分割を経由するα-アミノ-β-ケト酸エステルの効率的な触媒的不斉水素化反応の開発に成功した。すなわち、Ru-BINAP触媒とIr-MeO-BIPHEP触媒を用いる還元である。これらはいづれも極めて高いアンチ選択性で水素化反応が進行し、得られるアミノ酸の光学純度は最大95%eeに達する。ポリオキシベプチンAではアミノ酸Pip,OHMeProの合成にそれぞれジアステレオ選択的Diels-Alder反応、分子内アルドール反応を用い成功した。また、HOPipはリンゴ酸から誘導される環状ヒドラゾンのジアスレオ選択的ストレッカー反応を経由して合成した。パプアミドAでは立体化学不明の成分β-MeOTyrの絶対配置の決定を合成的に行った。そして、パプアミドBの環状デプシペプチド部分の合成にも成功した。最近、我々は抗炎症活性を有するハリペプチンAの全合成に成功した。 (2)複素環合成を指向した連続反応の開発研究 今回G-蛋白連結型レセプターアンタゴニストマルチネリンの合成を想定して、アリル位置換反応-ヒドロアシル化連続反応を検討し、この連続反応と等価なアリル位置換反応-Stetter連続反応の開発にはじめて成功した。我々のチアゾリニウム塩を用いる系では2種の反応系は相互に阻害すること無く、定量的に目的物を生成することが判明した。現在この反応を適用範囲、不斉触媒化を検討している。
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