当研究室ではオルトキノンメチドを反応活性種とする分子内付加環化反応を用いて置換サリチルアルデヒドと置換o-プレニルフェノールから得られたベンゾピラノベンゾピランが非常に強いDNAトポイソメラーゼ阻害活性を示した。そこで、本縮合反応の反応条件の最適化と各種の置換誘導体の合成について検討した。 先ず基本的であるサリチルアルデヒドとo-プレニルフェノールの組合せを用いて検討した。室温ではトランス縮環体が選択的に生成したが、同時にプレニルフェノールの自己環化によりベンゾピランが生成し、一旦生成した四環式化合物がretro Diels-Alder反応により減少することも認められた。還流条件では自己環化も進行したが、縮合反応が優先した。しかし立体選択性は低下して、trans/cis=70:30で、幸いにも再結晶により各々を単離することができた。 本手法により得られた化合物のヒト培養がん細胞パネルによるスクリーニング評価の結果、置換基の種類により各々異なった既存の薬剤と類似した活性パターンを示した。 次に環の縮合形式が異なる四環式化合物の合成についてトランス型化合物が選択的に生成したが、同時にシス型置換ベンゾピランが生成した。これに酸触媒を作用させるとトランス四環式化合物とそのシス異性体を生成した。 次にピラン環の数が1つの四環式化合物の合成と行なうため、その前駆体となる置換フェノールの合成について検討した。5-ノニルチオエチルベンゼン誘導体を用いたシグマトロピー転位反応により目的を達成した。
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