研究概要 |
中性の2価反応種であるシリレンとカルボニル化合物から発生する、1,3-双極子であるシラカルボニルイリドの発生と、そのシクロ付加による様々な含ケイ素ヘテロ環化合物の効率的合成法の確立のために、精力的に研究を進めた。 1.シラカルボニルイリドの分子間シクロ付加反応 トリシランの光分解によって発生するシリレンと、カルボニル化合物からのシラカルボニルイリドの発生、および種々の親双極子とのシクロ付加による含ケイ素ヘテロ環の合成に成功した。シリレンとアルデヒドのみの反応では、シリレン、アルデヒドの1:2付加体が収率良く得られた。また、α,β-不飽和アルデヒドや電子不足アルキンの炭素-炭素多重結合とも反応し、対応するシクロ付加体を得ることができた。特に、シラカルボニルイリドとアルキンの反応により得られる、2重結合を含むシクロ付加体は、シリル基上に脱離基を導入すると、シクロ付加後の脱離により含ケイ素芳香環へと誘導することが可能となる。そこで、脱離基をもつトリシランを用いて反応したところ、シクロ付加体が良好な収率で得られた。 2.シラカルボニルイリドの分子内シクロ付加反応 上述の分子間シクロ付加反応では、電子求引基をもたない炭素-炭素2重結合では、反応性が低下する問題点があった。そこで、本反応を分子内シクロ付加に展開した。また、この反応により、複数のヘテロ原子を含む複雑な多環性化合物を簡便に合成することが可能となる。中でも、炭素鎖内に酸素原子を導入した、末端に2重結合をもつアルデヒドを出発物質として反応した場合、環状エーテルを含む含ケイ素縮環化合物を容易に合成することができた。これは、ケイ素-炭素結合を酸化的に切断することにより、ジオール体へと容易に誘導できた。得られた化合物は、糖の類縁体であり、さらに誘導すると簡便にポリエーテル環化合物を合成可能であることから有用である。
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