研究概要 |
本研究は,シグマトロピー転位反応を用いた,新しい1,2-ジアミノ骨格構築法の開発を目的とし,2,3-ジアミノブタン酸と海綿Agelas dendromorphaから単離・構造決定された4環性ピロール骨格構造を有する海洋天然物アゲラスタチンAの合成研究を行った。 L-乳酸メチルエステルを出発原料とし,Horner-Wadsworth-Emmons反応を経てα,β-不飽和ケトンを合成した。得られたケトンを立体選択的に還元し,アリルアルコールを合成した。アリルアルコールからアリルシアナートを誘導した後,転位反応を経てカルバメートを合成した。得られたカルバメートに対して同様に転位反応を行いイミダゾリジノンを合成した。得られたカルバメートの二重結合を酸化的に開裂した後,加水分解を経て目的の(2R,3R)-ジアミノブタン酸の合成に成功した。また,同様の手法を用いて(2R,3S)-ジアミノブタン酸の合成にも成功した。 アゲラスタチンA(1)はPietra等によって構造決定され,最初のラセミ体の全合成は,1999年にWeinreb等が報告している。そこで,アリルシアナートの転位反応を鍵反応とした全合成を計画した。L-アラビトールを出発原料としてα,β-不飽和アルデヒドを合成した。Soai等によって報告されているジエチル亜鉛の不斉付加反応を用い,アリルアルコールとした。引き続き,アリルシアナートの転位反応による不斉転写によってカルバメートを得た。閉環メタセシス反応を用いシクロペンテン骨格の構築と,2回目の転位反応を行い1,2-ジアミノ骨格をもつシクロペンテン中間体の合成に成功した。現在,ピロール環の導入と全合成を検討中である。
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